成長曲線の実際(No.3)
肥満が伴った成長率の低下は要注意!(その1)
11歳のC子さんは、低身長を主訴に外来を訪れました。来院時の身長124.0cm(-2.94SD)、 重38kg(肥満度+83.8%)と著明な低身長と高度の肥満が認められました。
成長曲線を描いてみると、生まれたときはほほ標準の体格で、その後も6歳まではほぼ平均身長・体重に沿って成長していましたが、6歳以後成長率が急激に低下し、それに比較して体重の方は増え続けていました(図1)。
図1の体重曲線では分かりにくいのですが、 肥満度曲線(図2)を描いてみると、6歳までの肥満度はほぼ 0~5%ぐらいであったのに、以後急激に増加して、11歳時には80%を超えているのが判ります。
診察所見では、乳房がTanner2度の軽度の発育をしており、思春期にはいったところです。
甲状腺が少し腫大していました。レントゲン検査では、骨年齢は6歳と著明に遅れていました。血液検査で、甲状腺ホルモンの低値と、甲状腺刺激ホルモンの 常高値が認められ、原発性の甲状腺機能低下症による成長率の低下と肥満の進行と考えられました。
甲状腺自己抗体も検出されたことより、慢性甲状腺炎(橋本病)による後天性甲状腺機能低下症と診断されました。甲状腺機能低下症の場合は、骨年齢も著明に遅れることが特徴です。
治療は、甲状腺ホルモンの経口投与により、著明なcatch-up(追いつき)成長が認められ、通常低身長女児の思春期の伸びは20cmぐらいですが、骨年齢が遅れていたこともあり、30cm以上も伸びてほぼ平均身長にまで追いつきました(図3)。肥満度も急激に低下し、20%を下回りました (図4)。
後天性甲状腺機能低下症は、慢性甲状腺炎によるものが多いのですが、子どもの場合には、成長率の低下が明らかな症状として認められます。
C子さんの場合も、成長曲線を描くと6歳以降の成長が異常なことが明らかです。毎年身長を測定しているのだから、成長曲線を描いていればもっと早く、少なくとも身長が- 2SD以下の低身長になる前の8歳頃には気がついたはずです。
甲状腺機能低下症のその他の症状は、便秘、寒がり、体重増加、低体温、無気力などの非特異的なものが多いので、それらの症状からの診断は困難です。C子さんは、幸いほぼ標準身長までcatch-upしましたが、診断が遅れると治療をしても低身長に終わることがあります。
肥満を伴った成長率の低下は、病気が隠れていることが多いので、要注意です。 肥満は体重曲線だけでは分かりにくいので、肥満度曲線を描くことによって、その変化がよくわかります。
低身長は、同性・同年齢(月も)の子の多数のデータから統計的に定義されていて、背の小さい順に100人並べたときに、前から2人ぐらいが「低身長」という定義に当てはまります。
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